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DJ-【コラム】半導体製造装置ASML、強気の超長期戦略

Dow Jones · 11/15/2022 19:10

――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 オランダの半導体製造装置大手ASMLは好不況の波が激しい業界において、極めて優位な立場を維持している。市場が1年、あるいは2年落ち込んだくらいでは、野心的な事業拡大計画の一部を棚上げする理由にはならない。

 半導体製造装置を取り巻く足元の事業環境は好ましくない。先行きに対する期待も持ちにくい。半導体メーカーはパソコンやスマートフォンといった主要市場での需要低迷が打撃となり、設備投資計画の縮小を急いでいる。データセンターの市場でさえ、かつての熱気に後退がみられる。半導体製造装置への投資額は今年、総額990億ドル(約13兆8500億円)に達するとの見通しを業界団体のSEMIは9月下旬に発表した。この数字は過去最高であるものの、SEMIがその3カ月ほど前に示した予測を16%下回る。2023年は2%減少する見通しだという。

 こうした中でASMLが生産拡大を目指すのは不思議なタイミングに映るかもしれない。同社は11日のアナリスト向け説明会で、年間の設備投資額は25年までに15億ユーロ(約2200億円)に達するとの見通しを示した。1年前に示した見通しからは50%増えた。設備投資は生産能力の大幅拡大に充てるという。先端品である「極端紫外線(EUV)露光装置」の25年の生産台数は約90台で、来年の生産見通しからは50%増となる。

 EUV露光装置は製造が難しいことからも、今回の生産見通しは注目に値する。チップ上に描く回路の微細化につながるこの装置によって、半導体メーカーはプロセッサーの小型化や消費電力の削減を追求することができる。業界で「ムーアの法則」の物理的限界が明らかになる中、メーカーが回路設計の高度化を続ける上で鍵となるツールだ。ただ、ASMLにも物理的限界があり、EUV装置のレンズを供給するのは1社のみで、生産には12カ月かかる。

 好不調の循環が激しい半導体製造装置の市場において、生産能力の大幅拡大は容易ではなく、リスクも伴う。ただ、ASMLにはいくつか大きな強みがある。EUV露光装置を製造するのは世界で同社だけであり、こうした装置は台湾積体電路製造(TSMC)や米インテル、韓国のサムスン電子といった半導体メーカーが最先端品の製造において競争力を保つために不可欠となっている。

 半導体メーカーはたとえ設備投資を減らしたとしても、ASMLへの発注を取り消すことはないと思われる。ASMLの受注残は現在、売上高の2年分近くに相当する380億ユーロに達しており、こうしたメーカーは取り消しによって後回しにされることを心配するだろう。

 先月の決算説明会でASMLはアナリストに対し、半導体製造装置の先端品に対する中国への新たな輸出規制の影響は軽微にとどまるとの見通しも示した。「需要は引き続き供給を上回っている」とし、中国以外でも世界での需要は「十分すぎるほどある」と説明した。実際、半導体が政治問題化する傾向はASMLにとってプラスとなる可能性もある。米欧は国内・域内の半導体製造能力の拡大に向けて投資を強化しており、EUV装置に対するニーズは高まっている。

 こうしたことから、ウォール街はASMLが示す野心的な計画に対し、リスクは低いと判断している。ニュー・ストリート・リサーチのピエール・フェラグ氏は14日のリポートで、ASMLについて「こうした見通しを自信を持って出すのに必要な視野と競争力」を有する数少ない企業の1つだと述べた。サスケハナのメディ・ホセイニ氏は同日、ASMLの投資判断を「ポジティブ」に引き上げ、リードタイムの長さによってASMLは「迫り来る23年のリセッション(景気後退)を乗り越える」ことができるとの見方を示した。

 ASMLは10日に最新の長期見通しを発表し、同社のオランダ上場株はそこから14日引けまでに17%上昇した。フィラデルフィア半導体指数(SOX)と同様だった年初からの大幅な下落パターンから脱した格好だ。半導体関連銘柄の間で、ASMLは輝きを放つ存在となっている。