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DJ-【焦点】廉価EV電池にシフト ネックは中国依存と航続距離

Dow Jones · 11/15/2022 18:28

 電気自動車(EV)の価格引き下げに向けて、主要メーカーの間で安価な車載電池を採用する動きが広がってきた。ただ、コストは下がるものの、航続距離が短くなるなどマイナス面もあり、そのバランスが課題となっている。

 複数のメーカーがここにきて採用を計画しているのが、世界最大のEV市場である中国で普及している「リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)」だ。LFPは北米や欧州で広く使われているニッケル・コバルトを使った電池よりもコストが安く済む。

 テスラやフォード・モーター、リビアン・オートモーティブなどのメーカーは、LFPによってEV価格を下げられると期待を寄せる。とはいえ、航続距離といった性能面への影響や火種となりかねないサプライチェーン(供給網)の問題など、乗り越えるべき課題も多い。

 LFPはニッケル系電池に比べてエネルギー密度が低く、航続距離が短くなるという欠点がある。そのため、メーカー各社はLFPに改良を加えることで、航続距離の延長を図っている。またLFPの製造に欠かせない供給拠点は中国に集中しており、EV技術で中国への依存低下を目指す自動車業界には大きな壁だ。

 これまで数年単位の開発サイクルに慣れてきた自動車業界にとって、巨額投資を伴うEVバッテリー戦略は従来以上に迅速に調整していくことが求められる。鉱物価格の変動に加え、バッテリー技術や政府政策の変化に対応する必要があるためだ。

 リビアンはトラック、スポーツ用多目的車(SUV)、バンの一部についてLFPに切り替えている。今年に入り、供給網の混乱で生産に支障が出たほか、コバルトとニッケル価格が高騰したためだ。

 リビアンのRJスカリンジ最高経営責任者(CEO)は9日、決算後の電話会見で「LFPに関しては非常に強気だ」と述べた。LFPは頻繁に充電できる場合に向いており、大型LFPが搭載できる空間広めの車種とも相性がいいという。

 LFPは数年前まで、中国で販売される低・中価格EV向けとの見方がもっぱらだった。中国では、混み合った都市部での利用が多く、かつ走行距離も一般に短い。欧州や特に北米では、中国ほど人口が密集せず広く分布しているため、航続距離が長いニッケル・コバルト系電池の採用が戦略の中核に据えられてきた。

 ところが、こうした戦略にも変化が訪れている。業界幹部らによると、ロシアのウクライナ侵攻を背景とするニッケル価格の高騰で、LFPへの関心が高まった。ロシアは車載バッテリーの原料である高品質ニッケルの主要供給国だ。今春につけた高値からは落ち着いてきたものの、なお高止まりしており、LFPの割安感が際立っているようだ。

 コバルト価格も近年、大きく値上がりしている。自動車メーカーはまた、主要産地であるコンゴの環境・人権規定違反への対応として、コバルトの使用抑制に努めている。

 LFPの搭載方法を変えることにより、航続距離の延伸に寄与している。アナリストによると、LFPは出火リスクも低減できる。

 技術進化により、いずれはLFP搭載の中型SUVの航続距離は300マイル(約480キロ)以上に達する見通しだ。UBSグループのグローバルEVバッテリー分析責任者、ティム・ブッシュ氏はこう指摘する。

 LFP搭載EVは2030年までに世界で4割の市場シェアを握ると同氏はみており、従来予想の15%から引き上げた。

 LFP搭載EVはここ1年、ニッケル・コバルト・マンガンを合わせたバッテリーのコストを約3割下回っていた。調査会社ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスが分析した。フォードはLFPの採用により、EVの原材料費を全体で最大15%削減できると述べている。同社は今夏、SUV「マスタングマッハE」とピックアップトラック「ライトニング」の一部について、中国・寧徳時代新能源科技(CATL)製のLFPを搭載する計画を明らかにした。

 もっとも、LFPにシフトすれば、メーカーの中国依存も高まることになる。他のバッテリーと比べて、LFPの供給網は中国への一極集中がさらに鮮明だ。これに加え、米国で先頃成立した「インフレ抑制法」により、LFPへの切り替えはさらに難易度が上がりそうだ。業界幹部は同法について、中国で製造・精製された部品・鉱物を使ったバッテリーを搭載したEVは、連邦政府による補助金の対象から除外されると解釈している。